kimitojacuzzi Anniversary

水戸を中心に活動するキミトジャグジーの記念ブログ

おもいで⑭ 「劇団であった怖い話」

「劇団であった怖い話」ついに黒幕の正体が明かされる三池編。あ、また答え言っちゃった。

謎の男が書くト書きにより、死んだはずの役者が全員生き返る。しかし、痛みや苦しみは体に残っているので「もう殺さないで」と懇願する役者たち。
「ト書き、突然全員倒れる」の言葉に、役者は床に押し付けられる。
ここは「見えない何かに頭を抑えつけられる感じで」って言ったんですけど、みんなどんどん芝居が派手になっちゃって、最終的に爆発に巻き込まれたみたいになっちゃった。

ウ、ウ、ウワー!!三池さんだぁあ!!
のぶりんに言わせると「歴史が変わった瞬間」ですね。
18年、謎だと言われていた脚本家。時代劇、現代劇、風刺劇、音楽劇。安定しない作風から、複数の作家で書いているのではないかと噂されていたキミジャグの台本。
三池から言わせると「馬鹿め。僕以外、この劇団の脚本を書くことができる者などいるものか」。
これって、長年彼が謎でいてくれたからできたシーンだと思うので、ここだけで「劇団であった怖い話」をやった意味はあった。それに、せっかくの記念イヤーだしね。いっそ舞台上出てきちゃえばいいのにと思ったけど、「そしたら20周年はどうするの」って言われてはっとしました。
え…?周年記念公演って、20周年でもするの…?

キミジャグのパンドラ。
脚本担当・演出担当の2人が、三池順太というひとつの名前を使っているということ。18年やってると当たり前になりすぎてあんまり説明してこなかったんですけど、私が演出を語っているのはこういうことです。
同じ苗字を使うという選択肢を選ばなかった私たちは、ふたりでひとつの名前を使うことにしました。これちょっと語弊があるんですが(笑)とりあえずそういうことにしておきます。
キミジャグを、ほんとに18年欠かさず見て下さっているお客様が、客席で「うお~…」って言ってるのが聞こえて、やってよかったなと思いました。そう、今回はお客様の反応も直で伝わってきました。ぬいぐるみ席の効果が大きかったのかもしれない。

三池さん的にも勇気を出さなきゃいけなかった台本だったんじゃないかな。節目として、きっとどこかで書かなきゃいけない本だった。
写真は三池とセンタースポットを二人で割っているとこなんですけど、この目線だと三池さんでかすぎるね。

脚本家にできること。それは、舞台上の神様になること。
役者の口を借りて、自分の思っていることを言える。
彼にとって演劇は自由な自己表現の場ではなく、作品が大量生産されて廃棄される場所。劇団にとって怖いのはおばけじゃなく、作品が忘れ去られること。
耳に痛いというか、心のどこかで思ってるけど言葉にしちゃいけない台詞のオンパレード。
これ、三池の喋り方に寄せる派と自分が思ってる三池順太像をやる派で分かれて、役者さんの解釈って面白いなと思いました。

18年間思っていたことを言ったけど、どうせこの芝居も消費されていく。ラストは、キミトジャグジーの世界観「暴力的でガーリッシュ」で締めたい。
そこで脚本家は、チラシの写真と同じ体勢でおりかさに死んでもらうことを提案する。
芝居を見た人にだけ分かる、チラシの写真の本当の意味。
冷酷な提案に怒るメンバー、それを止めるメンバー。
そして、いつも通りそれを受け入れる、死ぬことを言い渡された役者。
ここまでが三池編。そしてラストの、織笠編へ。

みんなからおりかさと呼ばれる女。好きなものは宇宙。
これまで華やかな役をやってきたけど、本物のおりかさはつまらない平凡な女でしかない。
ここは演劇に対する熱を失った脚本家へ、役者として意見をするシーンなんですけど、過去一緊張したかもしれません。普通に声震えるやん、自分、と自分にツッコミながら、いっこいっこ台詞を言った思い出。
忘れられたら終わりじゃなく、逆。心に残れば自分たちが死んでも作品は生き続ける。そのために表現を生み出す行為を、人は情熱と呼ぶんじゃないか。
しかし、おりかさの意見は脚本家に一蹴され、照明を消されてしまう。

メンバーは携帯のライト、キーホルダーの明かり、非常用の懐中電灯でおりかさを照らす。
「いつもスポットライトを浴びている役者なのに、今は小さな明かりしか彼女を照らすものがない。とてもみっともなく見えるが、そんなことには構わず、役者は台詞を続ける」っていう意図のシーンだったんですけど、音楽もあいまってお気に入りのシーンになりました。
まずキャストが照らし、オペ卓の非常用の懐中電灯が照らし、最終的に照明が復活。3段階で明るくなる。

ついに、何度も脚本によって死を味わった役者たちが、脚本家に反旗を翻す。ここ!これが今キミジャグにできる、最高峰の宇宙照明。ああ~、ここにあと何足せばいいかなぁ~。最終的に稽古場「風」に宇宙を作りたいんだ。

さて、このシーンでおりかさの体を借りて話しているのは誰だったのか。
見に来た方のなかでも解釈が分かれていました。

・本物の三池or織笠説

・織笠が演じた、役のひとつ説

・演劇の神様説

もっといっぱいあったんですけど、この3つを言ってきてくれる方が多かったかな。答えはどれでもよい。これが謎解きだったらキチンと答えを出すけれど【演劇には正解・不正解はない】ですね。
「自分の作品を誇っていいぜ」って台詞、いいですよね。他人の評価は大事だけど、それだけに依存するとどんどんつまらない作品になるし、まるで他の人のものみたいになる。これに関しては経験があるんですけど、愛着を持って作れなかった作品って思い出にならないんですよ。心が蓋をしてしまう。
でも、キミジャグのメンバーと今回客演で出てくれた2人は、毎回作品を愛そうとしてくれるから好き。これからも、おもしろいものもつまらないものも、たくさん作っていこうぜ。

しかし、脚本家を「机上の空論者」といった罪は重く、彼のキャラクターでしかないおりかさは幕を下ろすためにト書きにより殺される。
誰がどう殺すか、ここは日替わりでした。
舞台裏に「織笠殺害方法」って書いてある紙が貼ってあって、おっかねえなと思いました。

初日スペシャルは音響の美都子さんに焼き殺される。
楽日スペシャルは照明ののえちんに溺れさせられる。
他の日はそれぞれのキャストに撃たれる。
なるべく演劇的にしたかったので、シーン作りは細かく照明・音響さんにも協力してもらいました。
写真は、執行人がたかひとの時ですね。後ろから頭を撃ち抜かれるからいつきっかけが来るのか分からなくてめちゃくちゃこわかった。
だいすけは近距離で撃って来るからマジかよと思った。
友ちゃんは怯えながら引き金をひいた。
ぐっさんからは、「苦しませずに、ちゃんと殺す」という意思を感じた。
全員覚えてっからな…!
個人的に、照明ののえちんがおりかさへの返答を含めて全部照明でシーンを完結させていたのが「この子…すごい…」と思いました。
台本上だと

織笠「まだ、次の台本で会える?」
執行人「(短い返事をし、織笠を殺害する)」

なんですけど、のえちんver.の時はセンターのスポットがふっと点いて消える。それだけで、「ああ、今、返事をしたな」っていうのが分かる。wow!cool!

おりかさはチラシの写真と同じ体勢で、脚本家の考えた悪趣味なラストシーンを完成させる。
明日は振り返りラスト!いつのまにか12月も中旬!?仕事納めの準備が始まって皆さんもバタバタしているかと思いますが、また遊びに来てね。